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Milind Mulick の本を読んだのをきっかけに、その後も水彩風景画の洋書を Amazon で購入して読んでいます。このような素晴らしい本をまだ読んでいない人のために、今回はその中からいくつか紹介します。
(1)「Watercolour」「Landscapes step by step」
この2冊は Milind Mulick が著者で、水彩で風景画を描く上でのエッセンスが単純明快に書かれています。
たとえば、「Less is More」は最も心に刻む価値のあるフレーズで、少ないほど良くなる、という意味です。水彩画の鮮やかさを維持するにはなるべく少ないストローク数(筆を動かす回数)で仕上げることが重要です。
「Landscapes step by step」は Milind Mulick によるスケッチのデモ集で、写真を元に描くデモもありますが、写真の色とは全く違う鮮やかな水彩画には驚かされます。
(2)「John Pike Paints Watercolors」
水彩画の巨匠 John Pike が亡くなる2年前に出版された本で、John Pike が心がけていたことが詳しく説明されています。
この人は若いころはイラストレーターだったのですが、その後、水彩画に転向して成功を収めました。John Pike の水彩画教室には、上級レベルの水彩画を習うため、全米からプロのアーティストが通ったそうです。
この本で、「明暗の度合い(Values)を見分ける能力が水彩画家にとっては最も重要」と述べています。そして、「tonal sketch」と呼ばれる、全体の明暗の調子を鉛筆などで事前に検討するため下絵を描くことを勧めています。Milind Mulick も「サムネールスケッチ」で類似のことを勧めています。
(3)「The Water Colours of EDWARD WESSON」
この本は水彩画の巨匠 Edward Wesson が亡くなってから20年後に出版されたもので、二人の画家(Steve Hall, Barry Miles)が詳しく解説しています。特に驚くことは、Edward Wesson は可能な限り1レヤー(1ストローク)で描いていたということです。鮮やかでスケールの大きい風景画が多数掲載されているので、見ていて飽きません。
また Edward Wesson は本格水彩だけでなく、ペン彩画(Pen & Wash)も描いていますが、非常にダイナミックです。
(4)「Edward SEAGO」
この本は巨匠の一人である Edward Seago の風景画を集めたもので、掲載されているのは油絵風景画が90%、水彩風景画が10%で、水彩風景画を期待して買った僕としては少々残念でした。しかし、同じ構図の風景が油絵と水彩の両方で描かれていて、水彩画の鮮やかさが際立つ興味深い絵もあります。
Edward Wesson も Edward Seago も、特に人物が非常に上手いので感心します。また人物を鮮やかな色で、しかも風景の中に溶け込むよう描いています。人物はこういう風に描かなきゃいかんのだな、と改めて練習の必要性を感じています。
(5)「Paint Watercolour DISTILLING THE SCENE 」
著者は Ron Ranson です。この人は面白い人で、中年のころ失業してから独学で水彩画を勉強したそうです。
DISTILLING THE SCENE は「場面を浄化する」意味です。風景画を描く際に、見たままを描くのではなく、水を浄化するように、必要なものだけを美しくまとめるためのヒントが書かれています。特に印象に残っているフレーズは、
・Select & Reject:目の前の風景の美しさを表現するために、必要なものを選択(Select)し、不要なものを排除(Reject)することが重要です。
・Never fuss the foreground、これは「前景をガチャガチャ描くな」ということです。
また Ron Ranson は絵の90%を日本製の刷毛(英語で hake!)で描くそうです。
10月の上旬にグループで、久しぶりに赤レンガ倉庫に出かけました。
この日は「オクトーバ・フェスト」というビール祭りの開催中でした。赤レンガ倉庫は日差しを遮るものが少ないので、夏はスケッチには不向きです。それで10月にしたのですがそれでも暑いので、1号館と2号館の間の日陰で描きました。
ビール祭りのため、人は大勢いましたが、描ききれないので、数人だけにしました。
四季の森公園は自宅から近いこともあり、Foliage(樹木の葉の集合)を描く練習になるので、ちょくちょく行きます。この絵は 2015 年の 11 月中旬に描いたもので、正面の橋(蛍川橋)の向こうの木々が鮮やかに色づいていました。この絵を描いた当時は上手く描けたと思っていたのですが、1年後に見直してみると、少々描き過ぎのようです。
ここまで描かずに、もっとあっさり描いて木々のボリュームと紅葉の鮮やかさを表現するテクニックを身につけたいと考えています。
数年前にクラブ・ツーリズムのスケッチ旅行で軽井沢雲場池に行きました。時期は10月上旬でしたが、寒くて絵具が乾かないので描くのを止め、近くの喫茶店で酒を飲んで身体を温めたのを覚えています。その時の写真が残っていたので、それを元に描いてみました。
特に池に映る紅葉が見事でした。
(2016-11-25)