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編集:大田拓、更新:2021 年 12 月 30 日

水彩画が乾くと色が薄くなる原因と対策


1.Twitter で出会った水彩画の画集

2021年は Twitter の影響を大きく受けた1年でした。 大きく受けたとは「良い影響を受けた」と言う意味です。
従来は、水彩画の勉強をする方法と言えば、上手い人の絵を参考にするとか、著名な先生の水彩画教室に通うしかありませんでした(自宅から通える範囲に著名な先生がいるとは限らないし、また著名な先生の教室は授業料が高いのも問題)。

しかし、Twitter では全国または世界中の水彩画家の絵を見ることができます。
それで、Twitter で気に入った水彩画をPCに保存してきましたが、相当な枚数になったので、しまうまプリントでそれらを画集にまとめました。 永山裕子さん、小野月世さん、笠井一男さん、張学平さん、東俊達さん、藤田和平さんらの素晴らしい水彩画が1冊の画集になり、いつでも見ることができます。もちろん、この画集は僕1人が楽しむためのもので、これで商売にする気は毛頭ありません。
画面で見るのと違い、細部まで詳細に見ることができるので、大いに勉強になります。 たとえば、道路に落ちた影色が一様ではなく、場所により変化していることなども分かります。

ただしこの反動もあります。これまでと違って自分よりもはるかに上手い人たちの絵が「標準」になってしまったため、自分の絵が「下手」に見えてしょうがないということです。
この半年あまり、せっせとスケッチに出かけましたが、標準レベルが上がってしまったせいでいわゆる打率が1割台にまで落ちてしまいました。

2.水彩画の色の濃さの問題

水彩画には、濃く塗るのが難しいという面があります。
この原因の一つに絵具が乾いていることがあります。 絵具をパレットに出したままにしておくと、時間の経過とともに絵具に含有されている水分が蒸発し、絵具が固くなります。その結果、絵具を溶くために多くの水を使う必要があり、絵具が薄まって濃い色を出すのが難しくなります。

そこで、絵を描く毎に絵具をチューブからパレットに絞り出して描くようにすれば、少ない水分量でも絵具が伸びるので、濃く塗ることができます。
しかし、これでは絵を描き終わる毎に残った絵具を捨てることになり、勿体ないということになります。
プロの画家は大体そうしているようですが、絵が売れる人はそれでも良いのでしょうが、絵が売れないアマチュアはそうはいきません。

絵具を柔らかく維持する方法がもう一つあります。それは、絵具を使わない場合は、パレットの絵具に適度な水分を吹きかけて、チャックが着いたビニール袋に入れて密閉して保管することです。これで絵具に含まれる水分の蒸発が抑制されるので、乾燥を遅らせることができます。ただし、吹きかける水分の調整が難しい面があります。

紙質でも濃い色を出しやすい場合と出しにくい場合があります。
一般論として、アルシュなどのコットン100%の紙は濃く塗り易く、コットン100%以外の紙は、濃く塗りにくい面があります。ただし、コットン100%以外の紙でも、下の絵具が十分乾いてから上に塗れば濃く塗ることができます。

3.乾くと色が薄くなる

水彩画には色の濃さに関する重要な問題がもう一つあります。
それは、乾くと色が薄くなってしまう現象です。描いている段階では適度な色合いの絵になっていたのに、絵が乾いた後「何かインパクトがない」と感じた経験が誰しもあるでしょう。これは絵具が乾くと色が薄くなるためです。

この現象は、紙の繊維の乱反射が原因だと言われています。
紙が水分で濡れていると、紙の繊維の表面が水の影響でツルンとしているため、乱反射が起こりにくくなります。このため、紙は暗い色になります(つまり濃く見える)。
一方、絵具が乾くと水分がなくなり、紙の繊維の表面が乱反射を起こしやすくなります。その結果、色は白っぽくなります(つまり色が薄く見える)。

これに対する対策があるのかどうか絵の上手い人に訊いてみました。
対策ではなく、後の処理ですが、色が薄くなってしまった部位を塗り直す(同じ色を重ねて塗る)そうです。ただし、その塗り直しで、下の絵具の層に悪影響を与えないように、塗ると言うよりも「絵具を置く」感じで済ますそうです。ここが難しいようです。

上の絵は最近の作品ですが、池に移り込んだ部分が、乾いた後薄くなってしまいました。
それで、塗り直すべきかどうか悩んだのですが、塗り直しは止めました。それは塗り直す部分の面積が大きいため、これだけ広い部分を「絵具を置くだけ」の感覚で上手く処理できる自信がなかったからです。

下の絵も最近の作品で、紅葉した森の散歩道です。
手前の樹木の影部分は、描いている間は適度な濃さだったのですが、乾いてから見ると薄くて迫力不足の絵になっていました。この部分も簡単に塗り直すことはできませんから、修正は止めました。

まとめると、水をたっぷり使って描いた部分は、乾くと薄くなる傾向が強いと言うことです。
したがって、水をたっぷり使って塗る部分は、薄くなる分を見越して、少し濃い目に塗ると良いということです。

(2021-12-30)



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