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戦艦大和は万里の長城、ピラミッドと並んで世界の3大無用の長物と揶揄されています。万里の長城とピラミッドが無用の長物だったかどうかは分かりませんが、戦艦大和は巨費を投じた割には、太平洋戦争で役に立つことは殆どありませんでした。
まず、世界最大の巨艦にしたのは、世界最大の46センチ主砲を搭載する必要があったからです。米海軍の戦艦の主砲は40センチで、46センチ主砲なら、40センチ主砲が届かない遠距離から射撃できるからです(こちらには絶対に弾が届かない)。しかし、実際には、大和の46センチ主砲は殆ど当たらなかったそうです。それは発射してから着弾するまでに80秒かかり、その間に敵の軍艦が動いてしまうからです。
これは落語の落ちのような話ですが、大和の搭乗員だった人の話です。さらに実際に大和が会敵する機会は1,2回しかなく、実質的に何もしないで終わりました。
大和の最期は本当に悲惨で、米軍が沖縄に上陸したのを迎え撃つとの名目で、飛行機の援護がまったくない状態で沖縄への特攻出撃を命じられました。実質的に「死んでこい」と命じられた訳で、3000名以上の搭乗員が米軍飛行機の餌食になることがわかっていながら、従容として出かけ、わずか数時間の戦闘で九州の南方の海に沈没しました。
それにしても、こんな犬死のような作戦遂行を誰が命じたのでしょうか。
米軍の沖縄上陸をうけての作戦会議で、天皇から「海軍はなにもしないのか」とご下問があったので、海軍の上層部が止むを得ず沖縄特攻を命じたとの話もありますが、実質的に「死んでこい」を命じたのが海軍司令長官か軍令部総長かはっきりしないようです。
軍令部参謀長の草鹿龍之介が「一億総特攻の先駆けになってくれ」と伊藤司令長官を説得したとの話もあります。
小説家の星亮一は「悲劇の提督 伊藤聖一」の末尾で、国家の指導者たちの無責任さ、外交戦略、戦争戦略の欠如を嘆いています。
まったく、日本を悲惨な戦争に導き、多数の有為な若者を犬死させたのは、無責任な国家の指導者たちですが、
無責任な人間が指導者として国家に君臨し、日本を率いている状態はあれから77年たった現代においても変わりません。
2011年3月11日の原発事故で、多くの人たちが故郷に戻れない状態になり、それが今も続いています。
被害者が東電の首脳陣を相手どってこの責任を追及していますが、事故以前から長年に亘って東電のトップに君臨し続けてきた勝俣元会長は「津波は予想できなかった」事を理由に無罪を主張しています。
しかし津波がいつ来るかの予測は難しかったとしても、せめて全電源喪失のような状態にはならないように対策することはできたはずです。しかし、「メルトダウン(大鹿靖明著:講談社)」に詳しく書かれていますが、東電の首脳陣はそういう対策も緊急時の対応の訓練もしなかった。それが被害を大きくしたのです。
津波の予測はむずかしかったとしても、あれだけの事故を起こし、地域住民に甚大な被害を被らせたのですから、倫理的には東電のトップが責任をとらなければなりません。それをするべきは、立場上勝俣元会長でしょう。この人も無責任な指導者です。
僕は東芝OB(重電部門)ですが、僕の現役時代、この人の発言は正に天皇陛下の言葉のような意味合いで東芝社員まで伝わってきていました。したがって、この人が責任逃れをして逃げ回るような人だと知って、がっかりしています。
国家の指導者たちが責任をとらない傾向は、第2次安倍内閣以降一層顕著になっています。
第1次安倍内閣で、「美しい日本を取り戻す」なんてふやけたことを言ってねじれ国会になり国会運営に行き詰った挙句、安倍氏は体調不良を口実に政権を投げ出しました。
その後政権に返り咲いてから「アベノミクス」を売りに長期政権になったのですが、第2次安倍内閣の8年間に、国家の借金を増やしたことと、株高を維持して金持ちを優遇したこと以外で、日本全体にとってプラスになることを何かしたのでしょうか。
拉致問題は安倍内閣の一丁目一番地と位置づけ、「対話と圧力」だなんて勇ましいことを言いながら、トランプに頼むこと以外は何もできませんでした。小泉内閣で官房長官だった安倍氏は、小泉内閣で拉致被害者の帰国に尽力した田中均さんを、首相になってから飛ばしました。実力外交官を飛ばしてしまったら何も出来ないのは当然です。
結果を出せないことを承知しながら「一丁目一番地」だけは言い続けました。
さらに内閣改造を行う度に、地方再生、働き方改革などと目先のスローガンを変えて、国民に常に新しいことに挑戦しているようにみせかけましたが、地方再生も働き方改革も大きく変わっていません。一つの政策を最後まで粘り強く実行する根気のない人間がトップの座に君臨していると、10年たっても何も変わらないのは当然だったかもしれません。
またプーチンと20回以上飯を食って「地球儀を俯瞰する外交」なんて誇っていましたが、3年ほど前にロシアに「ロシア領土を外国に割譲しない」と憲法改正され、北方領土を取り戻すことが不可能になりました。これについて安倍氏は口をつぐんだままです。
憲法改正を叫びながら、自己に都合の悪いことになると憲法を無視するやり方を続けました。そして、政策が行き詰ると、体調不良を口実に政権を手放すやりかたを続けました。情けない政治家でしたね。
菅内閣
安倍内閣の官房長官として、強権的な政権運営を続けました。
この人はもともと番頭が適任だった人で、国家のトップが務まる人物ではありませんでした。携帯の値段を下げるとかワクチン接種を急がせるなどの一国務大臣の仕事は得意だったようですが、首相らしい仕事をしないで終わりました。
なお、ふるさと納税は菅氏が総務大臣だった時代の政策ですが、納税の本来の主旨とは全く異なる制度で、必要な税収が確保できず困っている地方自治体は少なくありません。
こんな政治家が未だに国策に関与していますが、なんとかならないもんでしょうか。
岸田内閣
岸田氏が総裁選で「自民党の役員の任期を一年にする」として当時の二階幹事長に挑戦状を叩きつけた時、この人は面白そうだと期待したのですが、その後の経過を見る限り失望の連続です。
思慮が浅いというのが岸田氏の印象で、官僚の提案を「それいいね」くらいの感覚でピックアップしているのじゃないかと勘繰りたくなります。安倍氏と総裁選を何度も戦ってきたのですから「自分が自民党総裁になったらこれをやる!」というものがあるはずです。
それを見せてほしいのですが、一貫したビジョンがなく、政策を思い付きで決めているように見えて実に残念です。
国葬問題は簡単に決めてしまって、後から説明に追われ、対応に四苦八苦という状態でした。
また原発問題と防衛費の増額は、日本の進路を決める重要な問題です。一内閣が勝手に決めてよい問題ではありません。
共に日本の国家ビジョンを大きく変える試みですから、まず、国会で十分説明し、国民の信を問うべきでしょう。
(2022-12-30)