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編集:大田拓、更新:2024 年 4 月 17 日

横浜旧市庁舎売却問題のその後


1.横浜旧市庁舎売却問題とは

横浜旧市庁舎売却問題とは、JR関内駅の東側にあった横浜市の旧市庁舎を、横浜市が三井不動産を中心とする企業グループに売却して、その跡地にホテルや高層ビルを建てる計画のことです。
この再開発計画の問題点は、建物の売却価格の破格の安さです。 有名な建築家が設計した地上7階建ての行政棟と呼ばれる建物が何と7700万円で売却されたのです。築後50年を経過しているとはいえ、10年前に60億円を投じて耐震補強まで行った物件がたった7700万円と聞いて納得する市民はいないでしょう。
これは林文子前市長の時代に計画されたものですが、行政棟をレガシーホテルとして横浜市が改修費用を負担して改修し、星野リゾートにホテルの運営をまかせる計画です。林文子市長は星野リゾートの社長夫人と親しいことから、おそらくその関係で安く売ったのだろうと推測されています。これが民間企業の出来ごとなら「利害相反」に問われるところでしょう。

この企業グループ7社の中に星野リゾートの100%子会社である「関内マネージメント」と言う名前の会社が含まれていたことから、これはおかしいと感づいた週刊誌が記事にし、それで大騒ぎになりました。
横浜市と三井企業グループ7社が仮契約を締結した時点で「関内マネージメント」のことが明らかになり、週刊誌が騒ぎ始めたのですが、本契約では企業グループ名から「関内マネージメント」の名前がなくなったのですが、星野リゾートがホテルを運営することは変わりません。星野リゾートを世間の目から隠すため、「関内マネージメント」の名を公式文書から消したのでしょう。

2.裁判の経緯

週刊誌の記事が出てから、横浜市議の太田正孝さんと井上桜さんが原告になって横浜地裁民事部に訴訟を起こしました。原告代理人は辻恵弁護士です。被告は横浜市長です。これが2020年6月9日です。
当初の原告側の訴えは「売却契約を破棄せよ」というものです。これが訴訟の始まりです。
その後1年以上にわたって、建物価格や土地の価格の妥当性について原告代理人と被告代理人が書面で激しくやりとりしましたが、被告側は金額の妥当性には触れず、売却金額を算定したプロセスは条例で定められた手続きを踏んでおり瑕疵はないと主張するばかりでした。

その後、2022年3月3日に、市民グループ約70名が「横浜の財産を守る会」を結成し、この売却問題を2名の市議だけに任せておくことはできないとして、集団訴訟を起こしました。
彼らの主張は原告の主張とほぼ同じであることから、先に提起した原告の訴訟と合併されて審議が進むことになりました。市民グループ約70名は「原告共同訴訟参加人」と呼ばれています。
そうこうしている内に、横浜市長選があり、カジノを誘致しようとした林氏が敗れ、カジノ反対派の山中氏が新市長になりました(2021年8月末)。 これを機に、訴訟の被告が林氏から山中氏に代わりました。

3.正式契約後の訴訟

そして、市長が交代してから1ヶ月後に横浜市と企業グループの正式契約が締結されました(2021年9月末)。 正式契約が締結されると、訴訟の内容が影響を受けます。 原告代理人は、それまでの「売却契約を破棄せよ」から「損害賠償請求」に変更しました。 しかし原告共同訴訟参加人は訴訟内容を変えず「売却契約を破棄せよ」のまま訴訟を続けています。
ある弁護士の話では、地方自治法では正式契約が締結されてからの「契約を破棄せよ」との主張は(最高裁まで上告しても)通らないそうです。それは訴訟でそういうことが可能になると行政に大きな混乱をもたらすからです。つまり地方自治法はそういう作りになっているということだそうです。

現実に、現時点(2024年4月)で、旧市庁舎跡地では再開発工事が進行中で、行政棟以外の建物は解体されています。今さら、契約を破棄しても解体された建物を元に戻すことは無理でしょう。

4.不動産鑑定のやり直し

2023年8月30日の公判で、原告代理人から裁判長に対して「該当建物の不動産鑑定のやり直しを裁判所主導でお願いしたい」との提起がありました。これまでの不動産鑑定は横浜市が選任し随意契約したA,B2社によるもので客観性が乏しいから、裁判所主導で不動産鑑定をやり直してほしいとの主張です。
これに対して裁判長から、やり直しを行うかどうかを決める前に、まず被告代理人から2社の不動産鑑定の概要を分かりやすく説明してほしい、との指示がありました。

この裁判長の指示に対する被告代理人の回答は2023年11月15日に提出されましたが、またもや従来と同じで「金額算定のプロセスに瑕疵はない」を繰り返すのみでした。 それで、原告共同訴訟参加人の一人であるYさんが2024年2月5日に被告代理人に代わって、2社の鑑定の概要を説明する「旧市庁舎建物売却価格の不動産鑑定の要点と課題」を裁判所に提出しました。 この論文の重要点は「不動産鑑定の正常価格がA社は7700万円、B社は15億円で、20倍もの開きがあるにもかかわらず、鑑定の最終売却価格は2社でほぼ同じ7700万円であるのはおかしいではないか」という点です。

この論文を読んでくださった裁判長から、2024年3月11日の公判で「2社の正常価格が大きく異なる理由がよく分からないので、次回の公判までにそれを分かりやすく説明する文書を出すよう」被告代理人に指示がありました。
被告側弁護人の能力では、この説明は無理であろうと思われるので、またもや「プロセスに瑕疵はない」式の論文を出してくるだろうと見ています。
いよいよ面白くなってきました。
(2024-4-17)



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